【ここで学べる事】
・クロストーク対応方法
・FFRWSの種類と対応方法
・PMT対応方法
・RNRVAS対応方法
クロストーク
クロストークとは
心房イベントを心室リードで誤検出してしまうことです。
心房イベントは「心房ペーシングや心房ペーシング後の電位」が検出されることが多く、CAVB患者では心停止をきたす可能性があります。
クロストークの発生要因は「高い心房出力」、「高い心室感度」、「ユニポーラ設定」があります。
防止と安全機能
クロストークを防ぐためには心房イベントを
無視する、見ない設定にします。
植込みデバイスでの心房イベントを無視する、見ない設定は
PAVB(post atrial ventricular blanking)
です。
不応期編でも少し出てきました!覚えていますか?
怪しい人はチェック!→「AVdelayと不応期」
心房イベントがブランキング内に入るように設定をしますが、
ブランキング内は全てを無視するため、不整脈などの本来検出すべき信号も無視してしまうため注意が必要です。
例えば、心室ブランキング内でPVCが起きた場合、心室イベント後は設定AVdelayで心室ペーシングがはいるためT波上ペーシングになることがあります。
これを防ぐために心室セーフティ機能が各デバイスにあります。
心室セーフティ期間に心室波を感知するとセーフティ期間終了後に心室ペーシングが入ります。
ただし、心房センス後には心室セーフティ期間はありません!
ファーフィールドR波センシング(FFRWS)
ファーフィールドR波センシングとは
心室イベントを心房リードで検出することです。
心房センシング感度は鋭く設定されているため、心室の電位を拾いやすくなります。
FFRWSをデバイスが誤検知することでモードスイッチが誤作動することもあります。
臨床ではFFRWSのことを「ファー」と言ったりします。
Type1 FFRWS と Type2 FFRWS
FFRWSにはType1とType2の2種類があります。
【Type1 FFRWS】
心室ペーシング後の心室興奮を心房リードでセンシングしてしまうことです。
DDDペースメーカではこれを防止するためにPVABが設定されています。
PVABに関してはこの記事をチェック!→「AVdelayと不応期」
PVABを延長しすぎると本来センスするはずの心房波を見逃してしますため注意です!
【Type2 FFRWS】
自己心室波を心房リードでセンシングしてしまうことです。
心室センス感度が鈍く、心房センス感度が鋭い場合に発生しやすく、頻度は稀です。
センスの感度調整でしか対応ができないため回避が難しいですが、ペーシング作動に大きな影響を与えることは少ないです。
ペースメーカ介在頻拍(PMT)
PMT(pacemaker mediated tachycardia)
心室ペーシング後の逆行性伝導を心房で感知し、SAVdelay後心室ペーシング、逆伝導を心房で感知・・・これを繰り返します。
ペースメーカを介して興奮が持続するためELT(endless loop tachycardia)とも呼ばれます。
防止対策としてPVARPがあります。
PVARP内での心房センスは見ているだけなのでPMTが発生しなくなります。
ただし、PARPを長くしすぎるとTARP(PVARP+AVdelay)の影響で上限レートが制限されます。
各メーカーごとに一時的にPVARPを延長させる機能もあるので要活用です!
融合収縮
融合収縮(fusion beat)
自己波形とペーシング波形の合成波形のことをいいます。
自己波形の直後にペーシングがはいることで起きます。特に問題はありません。
しかし、センシング不全によって自己波形を感知できていない可能性があることを忘れてはいけません。
臨床では「フュージョン」や「フュージョンビート」と言ったりします。
偽性融合収縮(pseudo-fusion beat)
自己波形の興奮の後半あたりにペーシングがはいることで起きます。
ペーシングは無効になり、体表心電図上ではスパイク波のみ確認されます。
これもセンシング不全が起きていないかを確認する必要があります。
偽性偽性融合収縮(pseudo-pseudo-fusion beat)
DDDペースメーカにおいて自己QRS波のタイミングで心房ペーシングが入り、AVdelay後(または、VSP)に心室ペーシングが入ることです。
体表心電図上ではQRS波の前後にスパイク波がみえます。
発生原因として
- 心房ペーシング後のAVdelay内でPVCが発生
- 心房のアンダーセンシング後の自己QRS波で心房ペーシングがはいり、ブランキング内センスすることで感知されない
自己QRS波後のT波直上ペーシングとならないように注意が必要です。
反復性非リエントリー性室房同期(RNRVAS)
心室興奮の逆伝導がPVARP内でセンスされ心房ペーシングが入るが、心房ペーシングが自己心房不応期内センスになるため無効ペーシングとなる。
その後、逆伝導と無効ペーシングが続く現象を
RNRVAS(repetitive non-reentrant VA syndrome)
といいます。
発生原因として
- 長いAVdelay
- 長いPVARP
- 速い下限設定レート
- レートレスポンスによるレート上昇
AVdelayやPVARPを調整して対策を行う必要があります。
RNRVASは体表心電図では発見が難しく
長時間記録していくことで心房興奮がないのに心室ペーシングがはいる波形をみることができます。
患者さん自身自覚症状は少ないといわれていますが、状態が急に変わることもあるので注意が必要です。
まとめ
ここでのトラブルはよく見るものばかりです。
特にクロストーク、FFRWS、融合収縮の対応を求められることが多いです!
体表の心電図をしっかりと見て波形の診断ができるようになっておきましょう!
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