【ここで学べること】
・AVdelayとは
・不応期の種類(PAVB,PVAB,PVARP)
・不応期が関係するトラブル
AV delayと不応期
AV delayとは、ペースメーカにおいて心房が収縮した後心室内に十分に血液が充填されるための時間です。この時間がないと心室は空打ちの状態で拍動してしまいます。
不応期とは、心房心室が収縮した後過剰に収縮するのをさけるために、収縮後外部からの刺激に一切反応しない期間のことです。不応期には絶対不応期と相対不応期があります。
AV delay
AVdelay
まずはAVdelayの確認をしましょう!!
AVdelay:心房が収縮してから心室に血液が充填されるまでの時間
では、基本波形でのPQ間隔は覚えていますか?
PQ間隔:120~200ms
が正常です!
PQ間隔とAVdelayは同じです。
適切なAVdelayを設定することで心房心室協調性を維持することができ、生理的ペーシングが可能になります。
よく”至適AVdelay”と言われますよね。
これをおろそかにすると心拍出量の低下や肺動脈楔入圧の上昇につながります。
通常ペースメーカの設定では”心房センシング後AVdelay”と”心房ペーシング後AVdelay”の2つがあります。
心房センシング後AVdelayと心房ペーシング後AVdelay
センシングAVdelay:心房センシング後の心室ペーシング
ペーシングAVdelay:心房ペーシング後の心室ペーシング
一般的にセンシングAVdelayはペーシングAVdelayよりも短く設定されます。
だいたい30~50ms短いです。
理由としては、ペーシング刺激後心房が反応するまで少し時間がかかるからです。
それでは、基本設定はどのくらいにしているのでしょうか。
ペーシングAVdelay:200~150ms
センシングAVdelay:180~120ms
心機能低下患者ではドプラ心エコー僧帽弁血流パターンから“Ritter法”や“Ishikawa法”によって至適AVdelayを算出します。
メーカーによっては至適AVdelayを自動で算出してくれるペースメーカがあります!
私は積極的にその機能を使っています。
房室伝導障害(A-Vblock)がない患者さんの場合はAVdelayを延長してできるだけ自己伝導を優先してあげることも大事になります。
ですが、延長しすぎると2:1ブロックになったり、RNRVASを発生させる要因になるのでしっかりと見極めが大事になります。ここに関しては後のトラブルシューティングで勉強しましょう!
[AVdelayの要点]
・ペーシング/センシングAVdelay:180/150ms
・A-Vblockがない人には自己伝導優先が基本
・AVdelayを延長しすぎると2:1ブロックやRNRVASが発生するので要注意!
不応期
冒頭でも記述しましたが、不応期を簡単に説明すると”心筋の過剰収縮を避ける”期間のことをいいます。
ペースメーカの不応期には2種類あり、”絶対不応期”と”相対不応期”があります。
絶対不応期(Blanking):すべての刺激に対して反応しない期間
相対不応期(Refractory period):刺激に対してセンシングのみ行う期間
簡単に言うと、「全く見ないと見てるだけ」です。
では、不応期の種類を見ていきましょう!
- ARP:atrial refractory blanking
- VRP:ventricular refractory blanking
- PAVB:post atrial ventricular blanking
- PVAB:post ventricular atrial blanking
- PVARP:post ventircular atrial refractory period
心房と心室の絶対不応期と相対不応期を図で示すとこうなります。
さすがに、多いですよね・・・。
用途別に見ていきましょう!
PAVB
PAVB:post atrial ventricular blanking
post:後
atrial:心房
ventricurar:心室
blanking:絶対不応期
心房イベント後の心室の絶対不応期です。
クロストークを防ぐ役割があります。
[クロストーク]
心房のイベントを心室で感知してしまい、本来ペーシングが入るところが入らなくなってしまうこと。
PVAB
PVAB:post ventricular atrial blanking
post:後
ventricular:心室
atrial:心房
blanking:絶対不応期
心室イベント後の心房の絶対不応期です。
FFRWS(ファーフィールドセンシング)を防ぐ役割があります。
[FFRWS]
心室波を心房側で感知してしまうこと。
FFRWSは2種類あり、TypeⅠとTypeⅡ
・TypeⅠ:心室波後に心房側で感知される。
・TypeⅡ:心室波前に心房側で感知される。
PVABで防ぐことができるのは心室波後のTypeⅠのみです。
では、心室波前のTypeⅡを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
そもそもTypeⅡは心室センシング感度が鈍く、心房センシング感度が鋭いときに起きやすいです。
なので、各センシング感度を見直すしか方法はありません。
PVARP
PVARP:post ventricular atrial refractory period
post:後
ventricular:心室
atrial:心房
refractory period:相対不応期
心室イベント後の心房の相対不応期です。
PMT(ペースメーカ起因性頻拍)を防ぐ役割があります。
[PMT(ペースメーカ起因性頻拍)]
心室刺激が心房へと逆行性伝導し、ペースメーカが逆伝導を心房波と誤感知しAVdelayを経て心室ペーシングが入る。それを上限レートで繰り返すこと。
PVARPはノミナルでは280ms程度で設定されており、逆伝導の長さによっては延長が必要になります。
また、AVdelayとPVARPを合わせたTARP(total atrial refractory period)という期間があります。
この期間が上限レートを上回ると2:1ブロックの原因になるため、不用意なPVARPの延長はさけるべきです。
まとめ
AVdelayと不応期は意外と密接な関係にあります。
トラブルシューティングでよくあるのが、2:1ブロックやウェンケバッハ動作など不応期の見直しが必要なことが多々あるので、しっかりと覚えておきましょう!
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