[ここで学べること]
・レートレスポンスの役割と種類
・AMS機能について
・各社のAMS機能詳細
・自己房室伝導優先機能について
基本的なモードの他に心房頻脈を抑制するための機能や自己房室伝導を優先するための機能などがあります。
特殊なペーシング機能はメーカーごとに呼び方や作動原理が違うためしっかりとここで理解しておきましょう。
レートレスポンス
NBGコードの4文字目である”レートレスポンス”はよく「○○○R」とモードでは表されます。
これは変時性不全にたいしての設定です。
変時性不全は心拍数が上がらない、上がりづらい症状のことです。
ペースメーカ患者の約4割がこの変時性不全があるといわれています。
また、植え込み後に変時性不全になる方もいます。
各メーカーごとのレートレスポンス機能で使用しているセンサーは大きく分けて3種類あります。
ADLの維持や向上を考えつつ必要時にレートレスポンスを入れることが大切です。
加速度センサー
体動や振動に反応します。
単位時間あたりの振動の強さとその量によって運動量を計測しています。
例えば、
徒歩から全速力で走ったとするとペースメーカ本体への振動が増え、振動が長く継続していることにより
機械本体が運動量増加と判断して設定レートまで上がります。
ただし、運動量に対して確実にレートが上昇するとは限りません。
さらに、精神的な要因(緊張やストレス)によるものには反応することができません。
では、加速度センサーをうまく使うためにはどうしたらいいでしょうか?
加速度センサーを使用するうえで必要な設定が以下のものです。
- 体動に対する感度(アクティビティ閾値)
- 最大センサーレート
- 上昇スロープ
- 下降スロープ
アクティビティ感度
どの程度の運動強度でレートレスポンスが反応するかを決めます。
あるメーカーでは「Low,Medium,High」と三段階に分けられていることがあります。
最大センサーレート
レートレスポンスが反応したときにどのくらいのレートまで上昇させるかを決めます。
上昇・下降スロープ
レートレスポンスが反応したときにレートを素早く上昇(下降)させるか、緩やかに上昇(下降)させるかを決めます。
いわゆる上昇(下降)させる傾きのことです。
分時換気量センサー
リードと本体間で微弱な電流を流し、呼吸による胸郭インピーダンスの変動感知し、呼吸数と分時換気量を求めてそれを心拍上昇へと連動させています。
息が上がると心拍数が上がることを機械が代行しているイメージです。
呼吸数には個人差があり、すぐにはセンサーが反応しないため加速度センサーと併用されることが多いです。
CLS:closed loop stimulation
1心拍ごとの心筋収縮力の変化を測定し、安静時と負荷時の差に応じてレートを上昇させます。
心筋の収縮力変化を測定しているので運動時や精神的要因(ストレスなど)でも反応してくれます。
QTセンサー
QT時間が心拍数や交感神経の興奮により変化することを利用しています。
現在では使用されていません。
AMS(Auto Mode Switch)機能
心房頻脈が起きた時に心房レートに追従してペーシングをしてしまうことを避ける機能です。
モードDDD,VDDのときに設定可能で、モードスイッチとよく呼ばれます。
心房頻脈が検出レートを超えたときに
DDD→DDI
VDD→VDI
へと自動変更します。
心房頻脈が検出レートを下回ると元の設定へと自動的に戻ります。
各メーカーのモードスイッチ機能の詳細を表でまとめました。
メーカー | 機能詳細 |
Medtronic | ・AT/AFエビデンスアカウント(注1)が3拍以上となった場合 ・心房レート中央値が心房頻脈検出レート以上になった場合 |
BIOTRONIK | ・最新の心房8拍中の5拍のインターバルが心房検出レートよりも短い場合 |
Abbott | ・心房移動平均インターバル(FARI)が心房頻脈検出レート以下になった場合 |
Boston Scientific | ・心房頻脈検出レート以上の心房レートになるとカウントが1増加、下回ると1減少し カウントが8になった場合 |
MicroPort | ・連続する32心拍中サスピションフェーズが28心拍以上の場合 ・連続する32心拍中サスピションフェーズ(注2)が28心拍未満18心拍以上の場合モニタリング 継続。続く連続32心拍中サスピションフェーズが28心拍未満18心拍以上の場合 |
注1 AT/AFエビデンスアカウント:心室イベント間隔内に2個以上心房センシングイベントが発生する場合
注2 サスピションフェーズ:心房リフラクトリー(WARAD)内で、心房波:心室イベントがn:1になるフェーズ
心房抗頻拍ペーシング機能(ATP)
心房頻脈を検出するとそれ以上のレートで心房ペーシングをおこなうことで心房頻脈を停止させる機能です。
BurstペーシングとRampペーシングの2種類のペーシング方法があります。
Burstペーシング:心房レートよりも早いレートで設定回数ペーシング
例) 心房頻脈を検知後、180ppm×10回
Rampペーシング:心房レートよりも早いレートかつレート間隔が短くなるペーシング
例) 心房頻脈を検知後、180ppm(1回打つごとに+10ppm)×10回
現在ではMedtronicとBIOTRONIKの2社のペースメーカのみATP機能がついています。
自己房室伝導優先機能
ペースメーカの設定を行う上で不必要な心室ペーシングは避けることは大前提です。
不必要な心室ペーシングは心不全のリスクを高め、心房細動発生のリスクがあるためです。
不必要なペーシングを抑制するために自己房室伝導優先機能がペースメーカには備わっています。
自己房室伝導優先機能は二種類あります。
AV delay hysteresis 機能
モードチェンジ機能
では、二種類の機能の詳細を解説していきます!!
AV delay hysteresis 機能
AV delayを一時的に延長し、自己の房室伝導を検知した場合にさらにAVdelayを延長します。
房室ブロックになった場合は延長されたAVdelayでペーシングした後、延長前のAVdelayに戻ります。
各社ごとのAV delay hysteresis機能を表にしました。
メーカー | 機能名 |
Medtronic | Search AV+ |
BIOTRONIK | IRSプラス |
Abbott | VIP(ventricular intrinsic preference) |
Boston Scientific | AV search+ |
MicroPort | Dplus |
注意!
AVdelayを延長しすぎるとPMTやRNRVASを発生させたり、不必要な延長は心機能への悪影響があります!
モードチェンジ機能
このようなモードを見たことがあると思います。
AAI-DDD、ADI-DDD
このモードは一時的にAVdelayを延長し自己心室波を検知したらAAI(ADI)モードに
房室ブロックを検知したらDDDへ自動変更する機能です。
メーカーごとに呼び方が違うので注意が必要です。
メーカー | モードチェンジ機能 |
Medtronic | MVP |
BIOTRONIK | VP Suppression |
Boston Scientific | RythmIQ |
MicroPort | SafeR |
注意!
メーカーによっては房室ブロックが発生したときのモードチェンジで心室波が1拍抜けてしまう場合があるため設定時はそこを考慮しておかないといけません!
まとめ
特殊なペーシングを行う際は、作動原理を理解しリスクを許容したうえで設定しないといけません。
メーカーごとに特徴があるのでしっかりと理解したうえで設定しましょう!
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