[ここで学べる事]
・MRI撮影が与える影響がわかる
・条件付きMRI対応デバイスが理解できる
・MRI撮影中の設定方法がわかる
植え込みデバイス患者のMRI撮影
MRIはCTと違い強力な磁場を使用して読影をしています。
強力な磁場はときに医療事故を起こし、度々世間でも取り上げられるほどです。
植え込みデバイス患者にも注意を払わなければ重篤な医療事故につながります。
ここではMRI撮影時のポイントを押さえていきましょう!
MRI概要
MRI : magnetic resonance imaging
MRIは磁気共鳴画像検査のことをいいます。
強い磁場と電磁波を利用して人体の内部を詳細に画像化する医療機器です。
他の画像検査と比べて、以下の特徴があります。
- 放射線被ばくがない
- 軟部組織の撮影に優れている
- 多方向からの画像撮影が可能
- 血管や神経などの走行を詳細に描出する
よく脳の読影や心血管を撮影しているのを見かけますね。
デバイスに与える影響
それでは、MRIがデバイスに与える影響です。
があります。
リードの発熱
リード先端周囲の発熱により心筋組織を損傷(焼灼)することがあります。
心筋が損傷することによりペーシング閾値の上昇やペーシング不全を引き起こします。
後述しますが、新規植込みでMRIを撮影するには6週間以上経過していることが推奨されます。
これは、リード先端が心筋にしっかりと癒着していないためです。
実際のところ撮影は可能ですが、保証がないため6週間以上となっています。
6週間経過しておらずMRI撮影の必要がある場合はリスクを承知のうえで行うしかありません。
リスクベネフィットが大切になります。
不整脈の誘発
傾斜地場やラジオ波(温熱治療器や高周波治療器)が曝露された時にリード電極に電圧パルスが発生し、心臓に直接電気刺激を与える可能性があります。
意図しない電気刺激により不整脈を誘発する可能性があります。
オーバーセンシング
傾斜地場やラジオ波が曝露した時にリード電極に発生した電圧パルスを感知することでペーシングが抑制されてしまいます。
また、頻脈としてイベント記録されることもあります。
デバイスリセット
MRIの磁場により本体メモリや制御回路に深刻な障害が発生したときにモードが強制変更されます。
デバイスのパラメーターが最低限の安全を担保できる設定に切り替わります。
リセット値はメーカーごとに決められた下限レートでのVVIモードの設定になります。
下は設定例です。参考までに・・・
パラメーター | リセット値 |
---|---|
モード | VVI |
基本レート | 65ppm |
上限トラッキングレート | 120ppm |
PAV | 180ms |
SAV | 150ms |
PVARP | Auto |
最小PVARP | 250ms |
ちなみに、バッテリー残量が一定値まで低下したときも設定が自動変更されます。
条件付きMRI対応デバイス
前述したように、植え込みデバイスに対しての影響が多くあらわれるMRIですが、条件付きであれば撮影することができます。
条件は以下にあげる通りです。
各メーカーがチェックリストを出しているのでそれを活用してみるのもいいかもしれません
デバイスとリードの適切な組み合わせ
各社特徴のあるデバイスとリードがある中、IS-1規格で同社のデバイスとリードでなくても接続使用が可能です。
しかし、MRI撮影をする場合デバイスとリードは同じメーカーでないとMRI対応となりません。
デバイスとリードが他社同士であった時のMRI撮影時の安全が保証できないためです。
植え込み後6週間以上経過している
新規植え込み直後はリード先端が完全に安定しておらず、ディスロッチしてしまう可能性があります。
本体交換の場合であれば、条件付きMRI対応カードが届き次第撮影が可能になります。
チェックデータが許容範囲内である
MRI撮影前と後には必ずデバイスチェックを行います。
撮影前のチェックで閾値と抵抗値が許容範囲内であれば撮影可能です。
例)
閾値:2.0V(0.4ms)以下
抵抗値:200~2000Ω(双極時)
出力:5.0V以下
※条件を満たしていないと撮影不可
上記の他にも細かい条件があるため事前に要確認です!
条件付きMRI対応カードと手帳の提示
手帳のみではMRI対応か判断がつきづらいため、条件付きMRI対応カード(後述)も一緒に提示が必要になります。
条件付きMRI対応カード
条件付きMRI対応カードは「条件付きMRI対応カード発行依頼書」を製造会社に提出することで発行ができます。
新規植込み後や本体交換後に患者さんに署名をもらい郵送で送ります。
カードには、患者氏名、植え込み施設、機種名、リード、植え込み日が記載されています。
署名をいただく際に、MRI対応カードの必要性をしっかりと説明しなければなりません。
また、患者さんが詐欺に合わないために郵送受け取り時に請求がないことも必ず説明をしています。
MRI撮影時のモードとリスク
撮影前の作動率や心内心電図を考慮してMRI撮影時のモードを選択します。
主に非同期モード(AOO,VOO,DOO)とペーシングOFFモード(OAO,OVO,ODO)のどちらかになります。
それぞれのリスクとして、
非同期モードであれば、Spike on T
ペーシングOFFモードであれば、心停止
があるため常時モニタリングの必要があります。
除細動機能がある場合は設定変更でVT/VFの検出をOFF、つまり治療をしない設定にしないといけません。
MRI撮影中のオーバーセンシングによって不必要な治療を防ぐためです。
そのため、撮影のときは除細動器がいつでも使用できるように準備が必要です。
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